東京高等裁判所 昭和39年(く)172号 決定 1965年1月27日
少年 B・N(昭二四・三・一六生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣意は、本件非行は少年が前に勤めていた工場を辞めてから一ヶ月半位の間に犯したもので、親の監督不行届きの結果であるが、今後は少年を親の手許におき、親の職業植本職の手伝いをさせて、立派に更生させる自信があるから、原決定の処分は重きに失して、著しく不当である、というにある。
しかしながら、本件少年保護事件記録および少年調査記録を調査すると、本件非行の財産的被害はいずれも比較的軽微ではあるが、常に数名共同して敢行しており、ことに恐喝の非行はすべて年少者を相手にしているところ、中には直ちに被害の申告をなし得ないほどの畏怖を与えたものさえあり、また、非行は窃盗と恐喝に亘つており、且つ極めて短期間に反覆して行われているなど、非行の罪質および態様自体が軽視することのできないものであること、少年は中学校在学当時から非行に親しむ行動傾向があつて、本件非行も少年にとつて偶発的なものとはいいえないこと、少年は知能の程度も高くはないうえに、性格面において自己顕示性の変調がみられ、資質的に非行との親和性が強いこと、交友関係は不健全であり、また、家庭は少年の生活に配慮する余裕に乏しく、信頼を寄せがたいことなどが認められ、少年の再非行を防止し、改過遷善の実を挙げるためには、施設に収容したうえで矯正教育を施すのが適切であると考えられるのであつて(なお、原決定書裏一行目に奥田とあるのは恩田、同七行目に「一月」とあるのは「一〇月」のいずれも誤記であることが明らかであり、また、原決定書2記載の犯罪事実のうち恐喝未遂の点については、少年の自白のみしか証拠がないので、原決定がこれを認定したのは失当であるが、このような瑕庇があるからといつて直ちに決定に影響を及ぼすものとは断じ難い。)、これと同趣旨に出でた原決定は相当というべく、論旨は理由がない。
そこで、少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条により、本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 松本勝夫 裁判官 龍岡資久 裁判官 横田安弘)